年末にお金がなくて正月を迎えられるかわからない…
そんなとき、「単発バイトで日当即金!」などの広告を見たら、応募しようかと思いますよね。
しかしこれ、本当に即金で支払われるのでしょうか。
今は、インターネットでアルバイト情報をすぐ見られます。
エントリーシートを作っておけば、ワンクリックで応募もできます。
確かに応募はワンクリックですが、そのあと面接や登録と、面倒くさいことが待っています。
最初に結論から言うと、面接ナシでいきなり行って、すぐに働いて即金でお金をもらえる仕事は滅多にありません。
よくある試食のアルバイトに申し込んでみました。
試食の単発アルバイトを考えている方へ、ご参考になれるのでしたら幸いです。
単発試食のアルバイトは年末商戦期間が稼げる
12月も始まったばかりのころ、必至でアルバイト情報をながめていた私は、自分にできそうで即払いしてもらえる単発のアルバイトを探していました。
力仕事は無理だし、屈強な男性でもないのでガードマンも無理。
知らない人と話をする事には抵抗がないので、どうにかなりそうなのは、テレアポか販売だろうと思い、試食に目が行きました。
〔クリスマスケーキの試食販売日給13,500円交通費支給!〕
なんて言葉が画面を踊ります。
「クリスマスケーキの販売となれば、若い子のほうが見た目も良いし、合っているだろう」
そんな雇い主目線で自分を客観視しつつ、よくよく見るとすぐ下に
〔お正月料理の師匠販売日給13,500円交通費支給!〕
と、似たような仕事があるではありませんか。
しかも、クリスマスやお正月のアルバイトは、遊びたい人や約束のある人が多いので、祝祭日や休日も若い人は集まりにくく、賃金は跳ね上がります。
〔一日だけでもオーケー!二日以上だとさらに賃金アップ!〕
なんて言葉もベタベタとついてきます。
ちなみに、2017年現在は人手不足と言われており、日当もずいぶんと高くなっているかもしれませんが、5年ほど前の当時は、同じ仕事でも普段の日は7,000~8,000ぐらいだったそうですので、まさに年末年始のかき入れ時というわけです。
11-18時の6時間(休憩1H)で13,000円交通費別至急となれば、時間給で2,000円以上ですので、ちょっとしたホステスさんなみです。
ちなみに、ホステスさんなどの夜の仕事は自分のガラではなかったのであきらめました。
お金もないから遊ぶ予定もないし…と思う人は、このような仕事で手を打つのでしょう。
私も早速、年相応のお正月食材販売の仕事にエントリーしました。
エントリー後、すぐさま私の携帯に会社から電話がありました。
試食販売専門の人材を大手スーパーなどに斡旋している会社です。
面接は定期的に行われているそうで、一番近い日の面接に呼ばれました。
単発試食のアルバイトは面接という名のオーディション!
面接を行う会社は上野の近くでした。
私の住まいは東京都下で西のほうですので、東京横断して行くことになります。
『お住まいからお近くのスーパーやデパートなどで食べ物の試食販売』
とアルバイト広告にはありましたので、交通費は出るし、会社自体が都心にあっても、都心に働きに出るわけではないから…
と、自分にも納得させながら面接に出向きました。
とても寒い日でした。
駅前ではホットパンツ姿のお姉さんが使い捨てカイロを配っていました。
「このお姉さんは日給どのぐらいなのだろうか…」
そんなことを思いながら、お姉さんからカイロを頂き、面接会場へ急ぎました。
会社は雑居ビルの中の一室で、狭い事務所でした。
面接会場へは別の場所へ案内されましたが、面接に来た女性は20人くらいいたようです。
今なら引く手あまたであろう若いリクルーターの女性もいました。
みんな私と同じく、藁をもつかむ思いで面接にやってきているのでしょう。
面接会場へ連れて行かれた私たちは、同じような雑居ビルの、椅子ばかりが並んでいる一室に通され、生徒のように並んで椅子に座りました。
面接担当の年配のベテラン女性が説明を始め、面接希望者の出席をとりました。
「うちでは大きな声で元気よく売るのが基本なので、まず名前を読んだら大きな声で返事ができるかどうかを見ます!それができない方は別の会社へ行ってください!」
と言われ、みなさんハキハキと返事をします。
ひと通り出席が確認できたとき、面接担当の方が
「あなたは日本語で会話ができますか?」と、イスラムの方らしく、頭に布をかぶっている女性に聞きました。
「少しならわかります」と言った女性に対し、面接官の方は
「少しではだめなのです。お客様相手の仕事なので、言葉がわからないと困るのです。残念ですが、今回はお帰りください。」
と言いました。
他にも、声が小さくて聞き取れなかったという方へ、お引き取りくださいと告げ、2人3人と早々に退出されました。
厳しいなと思ったけれど、無理をしたところで続きませんので仕方ないのでしょう。
面接官の先生は、残った女性に椅子を隅に寄せて場をあけさせました。
「これから、販売するハムの実演をします。ひと通り見てもらってから、次はみなさんが一人ずつ販売員としてやってもらいます。実演の際にお客様の役をどなたかしてください!」
そういうやいなや、傍らに用意してあったウインナーやハムの切れ端をホットプレートで炒め、爪楊枝をブスブス刺してゆきました。
「エいらっしゃいませーいらっしゃいませー。○○ハムの試食販売でございます!お正月のお節料理に欠かせないハムはいかがでしょうか~?ウインナーもございますので、よろしければお味見なさっていってください~」
マスクをかけていても、ハリのある通る声で流ちょうに話しながら手早くウインナーを炒めています。
「どうぞお味見なさってくださいネ~」
と、先ほどの厳しい面接官とはまったく違う人懐こい語り口調で、爪楊枝をさしたウインナーを受講生に差し出し、
「おいしいですか~?」
と聞く姿に、匠の技を感じました。
ウインナーを受け取った受講生がモリモリと食べている間にも、他の受講生にホイホイと爪楊枝で刺したウインナーを渡しつつ、
「サラダにもパンに挟んでもおいしいですよ~。ボイルで食べてもまた味わいが違います」
などと、口上を延々語り続け、惚れ惚れと見ているうちに実演は終わりました。
「さあ、次は皆さんの番ですよ!一番初めにやりたい方はいますか?」
月影先生の声に、活発そうな女性が手をあげました。
若い女性でしたが、ハキハキと物おじせずに演技を始め、先生のアドリブ質問にも卒なく答える優秀さに、
「あなた接客業やっていた?」と質問する先生。
聞かれた女性は、アパレルに居ましたと答えました。
やはり、販売のアルバイトに面接で残る人は、販売経験のある方が多いのです。
出席の時の返事では大丈夫だったものの、このオーディションでも、演技が未熟な生徒は退場を余儀なくされました。
終わりに近づくころ、私の番となりました。
たいへん緊張します。
できるだけ声を通るようにハキハキとしなくては…
先生は、私の演技に合わせてお客の役をしていましたが、突然ストップをかけられました。ギクッとする私に先生は半笑いで言いました。
「あなた、劇団にでも居たの?」
私の演技が妙に大げさで浮いていたようです。
こうしてオーディショいえ、面接は終わり、晴れて採用となった私は、通常の事務の仕事が冬休みに突入したと同時に、二日間、埼玉のスーパーで晴れてアルバイトをすることになったのです。
ちなみに私の通常の仕事は非正規雇用で、ダブルワークも法的に問題はなかったようです。
試食販売のアルバイトは自宅近くのお仕事先で通勤も楽???
仕事納めも終わり、いよいよ年の瀬。
大掃除できれいな部屋で新たな年を迎えることなど思いもよらず、私は生活費のために早起きして、東京の西の地から埼玉川口市までアルバイトへ出向きました。
確か、アルバイト情報の広告では
『自宅近くの近くでお仕事なので通勤もラクラク!都内各地お好きな仕事先を選べます!』なんて書かれていたはずなのですが…
「とりあえず川口行ってもらえないかしら?」で、2日間川口市となりました。
各地にスーパーマーケットやデパートは数多くあれど、試食販売員を募集している店はその時その時で違う上に、希望する場所は諸先輩方が優先されるというわけです。
経験があって、売上を出せば多少ワガママも聞いてもらえるようになるのかもしれません。
しかし、この頃の私は自分でも感心するほど前向きに生きていたので、
「まあ、あんまり近くで仕事してても普段の職場の人とバッタリ会ったら気まずいし…」
「たまには遠出して知らない町で働くのも気分が変わっていいだろうし…」
なんて、殊勝な心掛けで出かけておりました。
スーパーマーケットの裏方はプロの厳しい世界が待っている?
スーパーやデパートでは、内部で働く人にも万引きなどあってはならないため、私物は持ち込み不可になっております。
どうしても必要な場合、私物は外から見える袋に入れて持ち歩くようになっていますが、財布などの貴重品はロッカーに入れるのが基本です。
職場である店舗内は、お客さんという名の部外者が自由に歩き回っています。
貴重品を置いたままにして、なくなって、仮に盗まれたのだとしても、犯人を捜すことなどできはしないので、なくなって困るものはみんなロッカーにいれておきましょうという決まりがあります。
実は、私も2日目に、少し油断が出て私物を足元へ置いたまま仕事をしていたのですが、気がついたら袋ごとなくなっていました。
高価な物は入っていなかったはずで、何がなくなったかも今では覚えていませんが、なくしたことで少々気落ちした覚えがあります。
スーパーの裏口に到着した私は、倉庫や荷物の搬送口付近の受付で入館手続きを済ませ、ロッカーへ向かいました。
この間、誰も建物内を誘導などしてくれません。
ここからこう行ってエレベーター乗って3階行って右行ってロッカールームね。
と、簡単な地図を頼りに案内されます。
普段はお客さんとして正面から当たり前みたいに入っていたスーパーマーケットですが、裏口から入る時は、当然ながら初めはあまりフレンドリーな対応はしてもらえません。
もちろん、何日か通って、顔なじみができてくればまた別です。
しかし、ロッカーに到着したら、私より早く到着している女性がいました。
しかも同じ会社からの方のようで、お若く見えましたが、場数を踏んでいる先輩のようでした。
挨拶をして、こちらが初めてだと知ると、ロッカーの使い方を教えてくださり、
「ここのロッカーはコイン式だから100円玉使わないといけないじゃない?返してはもらえるけどそれが不便なんだよねー」
などと、気さくに語りかけて頂き、少し和みました。
その方とは別のフロアーで離れてしまいました。
私は肉のコーナーでお正月用のハムとウインナーを売るのでした。
試食販売開始!正月用ハムと焼き豚をお客に食べさせよ!
コーナーの主任に挨拶を済ませ、売り場へ行くと、既に前日来た方が残した売り場が準備されておりました。
「ハムは場になくなったら指定の商品を売り場から適当に出して切って並べてください。出したものは数を数えていくつ出したか集計してもらいます」
とのことでした。
商品を切ることも販売員がしなくてはいけないのでした。
ちなみに私の登録した会社では、お客様に試食を出すときに使う爪ようじ、商品を切るキッチンバサミやまな板、使い捨ての手袋、エプロン、ナイフなどは販売員が手持ちで用意することになっており、頭を覆う三角巾とテーブルクロスは会社で支給されたのを持っていきます。
そんなわけで、試食実技が始まりました。
面接と言う名のオーディションで指導を受けた通り、声を張り上げてお客様を呼び込みます。
「お正月準備はお済みでしょうかァ~?!〇〇ハムのウインナー、ハム、焼き豚はいかがでしょうか~?!!ただいま試食販売をしておりますゥ~!!ぜひ召し上がってください~!」
川口市は、昔からの下町風情の残る街で、人懐こい方が多いようです。
声を張り上げている私の横を通り過ぎたおじさまが、
「オォッ?いい声だねエ~!」と冷やかしていきます。
年配の方からは、しばしば
「一人暮らしなのでハムまるごとは買えないわ~。小さいのはないの?」と聞かれ、一人暮らしの方が多くなっている割には一人暮らし向けのサイズがないものだと気づかされたり、お客様の立場に立つというのは、なかなか興味深いものです。
こういうやりとりをレポートにすると、メーカーが商品開発の参考になさるようです。
同じように
「ハムは好きだけど、大きすぎるのよねえ。一人暮らし用のサイズはないのかしら。もう年だからさ、全部なんて食べきれないのよ」
と、試食をモグモグしながら語っている女性に
「ピチピチじゃないですか!」といったところ、
「いくらあたしでも今のはおせじだってわかるわよ!」
と言いながら、買い物かごにハムの塊を二つほどポイポイ入れて去っていかれたときは、自分かなり才能あるのだろうかと勘違いするところでしたが、たとえお世辞だとわかっていてもうれしいものなのですね。
土地柄なのか、お客さんとのやりとりは楽しくできたおかげで、その後精肉コーナー主任の私への評価は
「営業トークが見事です」と記載されておりました。
お客様だけでなく、やはりほめられるとうれしいものですね。
試食販売は、売り上げがすべてではなく、できるだけお客さんに味をみてもらい、感想を集めることも重要なのです。
精肉コーナーの主任さんも、売り上げよりも、試食後のお客さんの反応やコメントをを気にされていました。
マーケティングということですね。
試食販売仲間とのエールの交換で心ほぐれる
午後からは、近くのお酒のコーナーに別のアルバイトさんが入り、やはり声を高らかに商品アピールしておりました。
遠くのお惣菜コーナーでも、試食販売の女性が声をはりあげており、あたかも遠吠えで共鳴しあう野生動物さながらです。
近くに居た女性は、私より時間が短いため、私より先に帰っていったのですが、通用口のそばに居た私にニコリとして「お疲れ様です」と声をかけてくれました。
きっと、その場では一人で声をあげているようでも、他のアルバイトさんが大声をあげているので負けずに大声を出しているうちに、同士的な情がわくのかもしれません。
ロッカーで会った若い先輩も
「声が聞こえたよー」と声をかけてくれました。
こうして、2日間大声を張り上げて、2万6千円ほどを稼いだわけです。
試食販売アルバイトおわりに
2日間声をはりあげて、ようやく稼いだお金でしたが、実はお金は、即金ではもらえなかったのです。
年末の仕事でしたので、銀行が営業しておらず、年明けでないとお金も入金できなかったのでした。
単発で仕事を求めてくるのだから、私同様、お金に困っている方はいたのでしょう。
会社のほうでも気を利かせて、すぐにお金を受け取りたい方は事務所まで直接来てくれれば出しますと言ってくれましたが、自宅から遠くだったため、さらにそれで交通費を使うのももったいない気がして、取りに伺うのはやめました。
その後、振り込まれた金額は、思っていた金額より若干低めでした。
あれは何の分を引かれていたのだろうかと思いましたが、明細書を出してもらえなかったので謎のままです。
さて、その後も、登録さえしておけば仕事の依頼は来ていたのですが、高い日当があったのは、年末年始の時期だけでした。
試食の単発アルバイトでは、クリスマスと年末のほか、バレンタインデー、ホワイトデーの頃が、やはり人が足りずに日当を上げて募集をかけるようです。
私は寒い中二日間声を張り上げていたので、カラオケで鍛えたのどもすっかりからしてしまい、オーディションに受かったときは、もしその後も依頼がきて続けられるのであればやろうと意気込んでいたものでしたが、通用口の寒い場所に立ちっぱなしはやはりこたえて、楽しかった反面、体力の限界を感じ、その後の依頼の電話があってもお断りするばかりになり、2日間働いたきりとなりました。
それでも、あれほど大声で6時間えんえん騒ぎ立てるようなことがなければ、また行きたいなと思ったかもしれません。
会社の方針によっては、あまり大騒ぎしなくてもよい場合の商品もあるようですので、自分に向いた会社さんでしたら登録しておけば、ピンチのときは助かるかもしれません。
長いレポートにお付き合いありがとうございます。
このシリーズ続けます。
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