あれは10年ほど前。
仕事中にふと、初日の出の話題になり、そういえば自分は、まだ新年にご来光を見たことがないのではと気がつきました。
そして、初日の出が見に行きたい。山の上で見たい。と思い立たったのです。
しかし、今まで登山など大人になってからしたことのない私が思いつくのは、小学校のときに遠足で登ったことのある高尾山だけでした。
標高599m、高い山ではないが、夜に山へ行くというのはいかがなものか。
しかも、他に行ってくれる人を探さなければ、女性一人では危ないのではないか。
不安を感じつつも、高尾山の初詣に関する情報を集め始めました。
登山体験記は多かれど、人気のはずの高尾山の御来光体験は少なかったようなので、
以前行ったときの体験を記事におこしてみました。
これから行かれる方は参考に、行かない方は行ったつもりでお読みくださいませ。
※内容に一部、オカルトありですので、苦手な方はご注意ください。
高尾山で初日の出を見るために登山の知識を仕入れる
高尾山の山頂付近には、高尾山薬王院があり、初詣もできます。
お参りのために、お年よりや身体の不自由な方にも登れるよう、ケーブルやリフトの施設もあります。
ケーブルの到着駅から、高尾山薬王寺までは、なだらかに整備された歩道を歩けます。
しかも、初詣客のために、深夜もケーブルが動いているという情報を得て、これならば行けるのではないかと胸がはずみました。
ただ、山の上では、100m登るごとに1℃体感温度が下がると言われていますし、さらに、風速1mがあるとさらに体感温度が1℃下がると言います。
気温の低い山頂で、じっと日が昇るのを一人佇み待っているのはつらすぎるのではないか・・・
それなら、日の出丁度に到着するように時間を段どりをすればよいのか。
そんなわけで、元旦の日の出時刻を調べた私でした。
日の出の時刻は、インターネットで検索すれば簡単に調べられるのです。
2008年の元旦の日の出時刻は6:50でした。
それまでに山の頂上へたどり着き、ご来光を拝めることができるでしょうか。
いよいよ高尾山で初日の出を見に出発!
2008年、高尾山はミシュランで取り上げられて、海外からの観光客も増えておりました。
人気スポットの御来光は混むとの予備知識はあったので、他にも人が居るとは思いましたが、
ひとりでの夜の登山に、現地での日の出を待つ間の手持ち無沙汰とどう戦うかは不安でした。
そこへ、当時より神社・仏閣めぐりを趣味として活動していた姉が、
「自分も体験したい」と同行してくれることになりました。
同行してくれる人ができてひと安心です。
4時に家を出て、電車の先頭車両で姉と待ち合わせることにしました。
駅のホームへ行くと、車両の最前列の辺りのホームの端では、
カメラを設置した人々の集団が。
そんなにめずらしい電車が来るのかと、ホームの向こう側に陣取っている方々の一人に、線路越しから声をかけて聞いてみたところ、
年に2本しか走らない車両がやってくるとのこと。
これはまた新春にふさわしくめでたい事に遭遇したものです。
姉はまさにその電車に乗って車内で待ち合わせすることになっていました。
自分もこれからそれに乗って行こうとしてるんですから、縁起が良いったらありゃしません。
どれどれ、そんなに良いものならばワタクシも一枚・・・
と思ったら、電車が思いのほか手前で止まってしまい、乗るのに必死で、結局写真を撮るのはは電車を降りてからになりました。
写真は高尾山口の駅に到着後の『迎光号』の写真です。
電車を降りてからも、鉄ちゃんカメラマンが必死で写真を撮っており、便乗して写真を撮りました。
その様子をしばらく見ていた車掌さんは微笑みながら、
「そろそろはずしてもいいですか?」とおっしゃいました。
そうです。
『迎光号』は、普通の急行車両に看板をつけただけのものなのです。
だけどその看板が、鉄ちゃん達にとってはものすごい価値なのですね?
プレミアムワインのラベルみたいなものなのでしょう。
そんなオープニングがありながらの、登山開始となりました。
高尾山で初日の出を見るために夜の登山
私たちがケーブルの高尾山口駅へ到着したのは4:50頃でしたが、既にけっこうな人で、リフトやケーブルも動いておりますが、その時点で40分待ちとのことでした。
高尾山のHPでも、ケーブルはなるべく使わずに徒歩での登山を勧めており、姉は寝るのが遅くて一睡もしていなかったので(私は夕方軽く横になっていました)山頂へ向うのに体力を温存しておきたいとケーブル使用を望んでいましたが、入り口でもたもたしていたら日の出に間に合わないのではないかと、速攻徒歩での登山に切り替えました。
最初はなだらかな坂ですが、途中から急な坂の連続となり、電球のついた休憩ポイント(山道の曲がり角)で休みつつ、暗い山をもくもくと登ります。
他の方々もゾロゾロと登ってゆきます。
人が相当居るので、これならば一人で来ても寂しくはありますが不安はありません。
なにしろ夜の高尾山から見下ろす東京の夜景が見事ですし、山の空気はやはり清清しいです。休憩でタバコ吸ってたじいさんの煙さえなければ。
山でタバコを吸うって、下手すれば山火事になりますよねえ・・・
考えればわかることなのですが、寂しいことです。
左手に遠くまで見える夜景を眺めてはなごみ、見上げる星を見てはなごみつつ、歩を進めます。
空には先ほど家からも見えた北斗七星。夜景の上空には既に明けの明星が輝いて、地平線がこころもち明るくなってきています。
無事山頂で日の出を見れるのでしょうか・・・
姉も、地平線上空での美しいグラデーションに見とれながらも
「山頂で日の出見れるかな」と言います。
しかし、日の出時刻をチェックして来ていたので時間的にはまだ大丈夫。
山頂の途中の薬王院で、通常の参拝であればここでお参りをしてから山頂へ・・・
となるのでしょうが、時間的に厳しいのでお参りはご来光を見た(見れたら)後になりそうです。
途中から思いのほかきつくなっている坂に疲れてきた私は、前方に明かりがともっている場所を発見し、
「あれが薬王院か!」とぬか喜びしてしまいましたが、それはケーブルの終着駅でありました。
やっとケーブルのお客と並んだってことか・・・
しかし、ケーブルの駅をすぎたら坂が緩くなり、
先ほどまでもくもくと登るだけだった姉と私も平気でベチャクチャ話をしながら歩くようになります。
山道から参道になったということですね!
途中、長い階段はありながらも、あとは比較的楽な道のりでした。
薬王院に近づくにつれて混雑が激しくなり、階段も少しずつしか登れず、エネルギーを一気に使うこともなくなりました。
人混みがすごくてなかなか動けなくなったことにより、今度はそれで山頂まで着くのかどうか心配になりました。
薬王院の前後では、山頂までの階段が細くなっていて人がギュウギュウ詰めになっていまして、もう、そうなるとあとは間に合うかどうかは運任せです。
人混みなので隣のカップルの会話が聞こえてきました。
カレシ 「俺ネズミ年なんだよね」
カノジョ「え?あんた厄年じゃん?厄年って12年に一度来るんだよ!」
それは年男・・・・
姉はこのカポーの会話で初笑い頂いてました。
薬王院の混雑をぬけると、山頂までは舗装された道ではな、く普通のハイキングコースのような山道となります。
ここからは少し急ぎます。
東の空はもう朝焼けが美しく、結構明るくなっています。
今にもお日様が顔を出すのではないかと思うのですが、
日の出時刻にはまだだとわかっていたので、気が焦ることはなく済みました。
日の出時刻チェックは本当に大事でした・・・
そうしてとうとう、日の出時刻10分ほど前に山頂へ!!
高尾山で初日の出を見る登山☆ようやく山頂へ・・・
山頂では日の出を前にお坊さん達の読経が始まっておりました。
植え込みの、ほんの隙間に陣取って座っていた方々も、立ち上がってカメラをかまえはじめます。
さあ、あとは日の出を待つばかり。
でもこんなに人垣で、日の出の瞬間て見えるのかしら?
まあ、ここまでくれば間に合っただけでもヨシですね!
なんてことを思っているうちに・・・とうとう!
キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!!!!!!!
地平線の境目がギラギラとオレンジに輝き、いよいよご来光です!
人々の頭の合間から手を伸ばして必死に写真を撮りました。
そういや山の上だから、てっきり寒いだろうと氷点下覚悟で防寒対策をしてきたのですが、逆に登山で汗まみれになり、血行もよくなって寒いという感覚はここまでありませんでした。
でもここへ来て、カメラを上に差し上げて写真を撮っていたために手が冷てぇのなんのって!!
手の冷たさに耐えながら、何枚もシャッターを押していたところ、ふと、デジカメの画面に白いものがササッと入ってきました。
「アレ?」と思ったときには、シャッターを切っていたため、画像をたしかめてみたところ
何コレ・・・?人魂?
横にいる姉も写真を撮るのに夢中で、
「見て変なの写ってるよ!」と言っても
「ああそりゃまずいねぇ~!」
と言いながら普通にスルーされました・・・
なのであんまり気にしなくていいのかもしれません。
ご来光を見て、人々もようやくそれぞれ帰り支度を始め、
さてわたくし達も・・・
とふとふりかえると、右手後方になんと富士山!!
ウァーーー!!ヤラレタァ~!!
美しすぐる!!!
アァ~!ご来光の上にこんな景色まで堪能できるとはおもわなんだ・・・
またしてもしばしの記念撮影。
この頃が一番寒くて、カメラを持つ手がかじかんで大変な思いをしました。
冷気は、少しでもガードが弱いところから一気にやってきます。
しかも、山登りで汗をかいていたため、汗が乾くと同時に体温を奪われるのです。
ようやく持ってきたおにぎりを食べましたが、陽が登って陽射しが差しているのに、寒くてなにを食べてるんだか状態。
頂上付近にはお蕎麦屋さんもあり、お店は開いていて、お店に入っている方々もいらしたようですが、混んでいて、寒さに並ぶ気力もなく。
寒さ対策は、本当にくれぐれも怠りなく。
もうすこし下に降りて、身体が温まってから食べた方が良いのでは。との姉の言葉に従い、薬王院でお参りをしてから下山することにしました。
2008年元旦にひいたおみくじは吉でした。
おみくじには結構良いことが書いてあったようで、過去の日記には
「今年は期待できるかも~!」
と書いてありましたが、その後なにか良いことあったのかよく思い出せません・・・
しかし、山登りでよく言われますが、下山のほうが結構膝にきます。
登りと違い、息が荒くなるとかの苦しさはないのですが、楽に見えて足腰の負担がハンパではありません。
今度は、すっかり日の登り切った明るい景色にうっとりしながらの下山でしたが、駅に着いた時の足腰のガタつきぶりに泣かされつつ、ようやく家路への電車に乗ります。
家にもどったのは午前10時くらいでしたか・・・?
化粧がドロドロに落ちており、汗で顔がしょっぱくなっていて、すぐにお風呂に入りました。
お昼頃にようやく眠りにつき、起きたのは夜の7時過ぎでした・・・
元日は、帰宅してから延々寝ておりました。
起床後もしばらく足腰痛かったです。
おわりに
2008年の元旦は、念願の高尾山のご来光を見にいけました。
嬉しくて、当時日記に書いていたのが残っており、今回それを手直ししてこちらに掲載いたしました。
現在では、さらに登山人口が増えて、年末の高尾山は山頂までに通行規制があるとのことです。
さらに、2020-21年は、コロナ禍もあり、初日の出での混雑防止のため高尾山山頂が大晦日夕方から元日早朝まで閉鎖されていました。
今年の暮れはどうなることでしょう。
今でもたまに、姉と高尾山に行ったときの話をしますが、
「あれは10年前だからできたのだと思う。今やろうとは決して思わない」
と言い合って笑っています。
やはり山のぼりは明るいうちがよいです。
しかし、山から見下ろす東京方面の夜景。
紫からオレンジへのグラデーション。
滅多に見られない幻想的な眺め。
頂上へたどり着いたときの異様なテンション。
姉も私も、
「だけどあの時行ってよかった」
とも言い合いました。
一度くらいは体験しておくと、後々、あれは楽しい思い出だったと、思い出す日もあることでしょう。
〈参考記事〉高尾山へ初日の出を見に登る時に準備すると良いものまとめ