子供の頃、クラスに何人か、歯並びを矯正している子がいました。
その子は、お母さんに言われてと言っていましたが、歯並びが悪いと大変そうだなあと思うだけで、自分には関係のないことだと思っていました。
ですが、昨今は、海外の風習などが日本にも染み付いてきて、子供の頃に歯列矯正をすませていたり、大人になってからも歯並びを気にする人が多くなっています。
そんな私も、大人になってから、歯並びが気になりだしたのですが・・・
親知らずの治療を放置したら、どんどん歯並びが変わってきた!
子供の頃は、小学生のクラスメイトの歯列矯正を見て、大変そうだなあと思うくらいでしたので、歯並びを気にするほうではなかった私ですが、20代の後半になる頃、歯の並びが変わってきているのに気づきました。
始まりは親知らずから
親知らずは、痛みのないうちに抜いてしまったほうが良い。
若い頃に、そのような注意を誰かに受けたか、何かで読んだかして、私は生えて間もない親知らずを抜くことにしました。
当時行った歯医者さんでは、出てきた右下の親知らずを一本抜いたあと、
「他の親知らずはまだ抜くほど出ていないので、出てきたらでいいですね」と言われ、親知らずが育ってきたらまた来てねと言われたまま、いつの間にか忘れていました。
親元を離れて生活しているうちに、歯医者へ行く余裕もなくなって、親知らずはその間にどんどん伸びていきました。
ある日、気がついたら、親知らずは残り3本がすべて伸びており、以前抜いた上の部分の親知らずは、かみ合わせる歯がないため、飛び出るほど出てきていました。
親元より引っ越していたので、その時の歯医者さんは違う歯医者さんでしたが、
「これはすぐ抜けるよ!抜いていい?」と興奮して
「先生、次の予約の方いるんですけど」と受付の方にたしなめられるほどでした。
歯は、上下が揃っていないとどんどん出てきてしまうのかと、その時知りました。
その歯医者さんで、反対の左上の親知らずも抜きました。
最後に残った左下の親知らずは、歯もずいぶん育っていた上に、虫歯ができていたそうで、これは抜くべきだが、斜めに生えているので少し大変だと言われました。
この、斜めに生えた親知らずが、その後私の歯並びを変えて行ってしまったのです。
忙しさに歯医者さんへ行くのがおろそかになっているうちに、気がつくと歯が動いているような感覚を覚えました。
痛くはないのですが、どんよりした、鈍く、ずれるような妙な感覚でした。
私は歯ぎしりのクセもあり、デスクワークの仕事で必死になっている間に歯をくいしばっているときがあるのですが、それも手伝って、斜めに延びていた親知らずが、前歯を圧迫していたのです。
歯の妙な感覚は、仕事で下を向いてくいしばっていることから、疲れているのかと思っていたのですが、実際に歯が動いていたのです。
気がつけば歯並びが変わっていた!歯列矯正を考える
ある日、歯がどうにも気になるので、鏡で下の前歯をまじまじ見ると、中央の2本の前歯が、左右へ開き気味なって、隙間があいていました。
以前はこんなふうではなかったのに!と気にし始め、気になってしまうともうその事ばかり考えるようになってしまいました。
この前歯の隙間はどんどんひろがってしまうのではないか。食事をしても食べにくくなるのではないか。
悩み始めると、そのことばかり気になってしまい、憂うつな気分が続くようになってしまいました。
こんなに悩むくらいなら、歯列矯正をすればよいのではないか…
虫歯の治療と親知らず以外で歯医者に行ったことなどない私が、初めて歯列矯正を考えるようになりました。
子供の頃、大変だねと言っていた、歯に針金がいっぱいついている友達の口元を思い出しました。
あれを・・・大人になってからやるのはどのぐらい大変だろうか。
自分では見えないが、会う人が口元に気づけば驚くのではないか。
しかし、毎日歯のことばかり考えて悶々とするぐらいなら、思い切ってやってみるべきではないだろうか。
歯列矯正専門の歯医者さんに諭される
その頃は、引っ越したばかりで、親知らずを抜いた歯医者さんとは別の、歯列矯正を専門に扱っている歯医者さんへ行きました。
「歯並びが気になるので、矯正したいのですが」と相談すると、歯医者さんは穏やかに
「わかりました。見せてくださいね~」と言って、診察台へ座りました。
口を開けると、歯医者さんは私の前歯をつついて「う~ん・・・」と軽くうなり、
「これ、歯並び悪いかあ?」と続けました。
「でも、歯がずれてきてるんです!昨日よりもずれてます!」と言ったものの、
「大人の歯ってずれるんだよね~」と、当然のように言われます。
そして、
「どうしても歯の矯正をしたいとなると、この場合は上下左右合わせて4本の健康な歯を抜いてズレを直すことになる。」
「ズレを矯正して直していくので痛みもあるし、時間もかかる。うまく行くかどうかも確実ではないが、そこまでのリスクを追っても直さなければいけないほどの歯並びではない。」
と説明してくださいました。
それでは、ずれて気になる前歯2本を抜いて、差し歯にするのはどうですかと聞きなおしたところ、
「僕は、この歯並びは悪いと思いませんよ。」と言ったあと、
「自分の歯が一番ですよ。」
と言い、歯石だけ取ってもらって帰りました。
差し歯の姉からも諭される
「歯列矯正をしに行ったのに、歯医者に説得されてしてもらえなかった」
と、姉に愚痴ったところ、姉は
「それはいいお医者さんだ」と言います。
私の姉は、子供の頃あまり魚などを食べず、甘いものが好きで甘いものばかり食べていたからか、歯が弱く、小学生の頃に枕をかじっていたら歯が折れてしまい、その頃から差し歯を入れています。
臨海学校が楽しみで興奮して枕をかじっていたのだそうです。
私は姉と体質が違うのか、子供の頃は、小さな魚でしたら骨まで食べていたので、その分歯だけは丈夫だったので、歯ぎしりのクセはあっても、虫歯にもあまり悩まず、たいした治療はしないで大人になりました。
私は、姉の差し歯の歯並びが良いのが羨ましかったのですが、姉は逆に不便をしており、
「自分の歯が一番なんだよ」
と、先のお医者さんと同じことを言うのでした。
私は、その一件で、歯列矯正はしばらくおあずけにしようと思うことにしました。
「本当にガチャガチャにひどくなって、どうしても直したくなったらまたいらっしゃい。」
と、お医者さんに言われたとおりにしようと思ったのです。
自分の歯が一番!だけど、どうしても直したくなった時のタイミング
たまたま行った歯列矯正専門の歯医者さんが、何でもかんでも矯正してやろうというタイプの方ではなくて、私は良かったのだそうですが、一時的にもあきらめがついたのには、そのお医者さんのこんな説明があったからでした。
「大人の歯は動くんだよね。歯列矯正は、大人になってからもする人がいるけど、出産後とかにするのはチャンスだよ。
なぜかと言うと、出産でいきみすぎて歯がボロボロになってて、歯が動きやすくなっているので矯正がしやすいんだ。」
「あと、お年寄りの方も、歯の土台が弱くなっているので歯が動きやすいから、矯正しやすいのでお勧めなんだよ」
私は、その言葉で、どうしてもやりたかったら、出産後かお年寄りになってからでもいいかと思い、気持ちがおさまったのです。
自分でも、自分の歯で物を食べるのが一番だと思ったからなのでしょうが、おかげで、歯列矯正をしなくてはと思う強迫観念から開放されました。
出産経験はないままですが、このまま老齢に入ったとしても、自分の歯が残っているほうが食事は楽しめるし、健康な歯を無理やり抜いてしまわなくて良かったと、今は思います。
おわりに
歯並びで悩む人は多くいると思うのですが、私のように、本人はその時真剣に悩んでいても、周りから見ると、なぜそんなにと思う場合も多いです。
今回は、「歯列矯正をしようか、どうしようか、失敗例などを聞くと考えてしまう。」と、悩んでいる方へ、参考になったらと思い書きました。
生活に支障があるほどであれば、歯列矯正を勧める人は多いでしょう。
しかし、「気になるけど自分の歯が一番だな。」と思えるなら、歯列矯正はやめたほうが良いと思います。
お金と時間がかかります。ケアも大変で、ストレスも多くなります。
それでも、未練があるなら、もう少し年をとってから、あるいは出産を機に、まだ必要性があれば考える、というスタンスでいるのが、精神的に楽になれるのではないかと思います。